心筋梗塞で入院してしまいました。
治療してもらったから助かったけど再発が怖いよなぁ。
再発の可能性もあると聞いたし、どうしたらいいのやら・・・?
シニア世代になると、病気も発症しやすくなります。健康管理をしながら生活を送らなければなりませんね。
心筋梗塞や狭心症は、心臓に栄養を与える血管(冠動脈)に血栓やプラークで狭いところができてしまって、虚血(臓器に栄養と酸素が十分に届かずに臓器の働きが障害されること)に陥ってしまったことを指します。
虚血性心疾患は、再発の可能性もあるので再発予防のために生活習慣の改善が必要です。虚血性心疾患とはどんな病気で、どんなことに注意すればいいのでしょうか?
虚血性心疾患(IHD)とはどんな病気?
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。そのポンプは筋肉でできています。そして心臓の筋肉にも栄養が必要です。その心臓に対して栄養(血液)を送る役目の血管が冠(状)動脈です。
冠動脈という血管が狭くなったり、詰まったりすることで、心臓の筋肉に対して血液を送れなくなる疾患が虚血性心疾患(IHD)です。
冠動脈が狭くなり十分な血液が心筋に行き渡らず、胸が痛くなったり呼吸困難になるのが狭心症です。
冠動脈に血栓ができて詰まってしまい、血液の流れが止まって締め付けられるような胸部の痛みや圧迫感が持続するのが心筋梗塞です。
冠動脈内のプラークが破綻して亀裂が入り、そこに血栓が形成されて冠動脈が閉塞してしまうと血流の流れが悪くなり、心筋が虚血から壊死に陥ります。虚血性心疾患を起こした人は再発率も高くなるため、再発を予防することが重要になります。
再発予防に重要なこと
虚血性心疾患にならないように注意することを一次予防といいます。
一度、虚血性心疾患を発症した人が,再発しないようにすることを二次予防と言います。
できれば一次予防をして発症自体をしないことがベストですよね?普段からの食生活や運動習慣に注意することが重要です。しかし、健康なときには病気になるなんてことをあまり考えずに生活しているので好きなように生活する人が多いと思います。アクティブシニアの方は、健康を維持するために一次予防から気を配ってもらいですね。
一度、心筋梗塞を発症してしまった人は、再発に注意をしなければなりません。心筋梗塞を引き起こす方は冠動脈を危険にさらす因子、すなわち『冠危険因子』を有している場合が多いです。この冠危険因子を是正し、コントロールすることが再発予防になります。したがって、再発予防には、禁煙、定期的な運動、食事の管理、服薬の管理、病気を理解する、定期的な受診などが重要になります。
冠危険因子を是正することが重要
冠動脈を危険にさらせる要因のことを冠危険因子といいます。冠危険因子が多ければ,虚血性心疾患になるリスクも上がります。
狭心症や心筋梗塞の治療には、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)という治療があり、カテーテルで詰まってしまった冠動脈を広げる治療があります。
発症して間もない時期(急性期)の治療がスムーズに行われて早い段階で回復する方は、PCI後に発症時の痛みなどの症状もなく、早めの段階で回復する方もいます。心筋梗塞の症状がなくなり、改善することは大変いいことですが、スムーズに回復すると症状がなくなってしまうためか生活習慣の改善が難しい場合があります。
もう治ったから大丈夫だよ!
という方もいますけど、注意しないと再発のリスクもありますよ
虚血性心疾患を発症している方は,冠危険因子があるために発症していることが多いため再発をするリスクも高くなります.虚血性心疾患を何度も繰り返すことで心臓の筋肉には,ダメージが蓄積します.そのため,冠危険因子を訂正して,再発を繰り返さないことが重要になります.
冠危険因子にはどんなものがありますか?
心筋梗塞にならないようにするために冠危険因子を是正しよう!ということですが・・・さて、冠危険因子にはどんなものがあるのでしょうか?
以下のものがあげられます。
臨床で患者さんを見ていると,何かしらの冠危険因子がある人がほとんどです.
自分で管理することができる項目は是正していかないといけないですね!
喫煙は心疾患にもよくありません
虚血性心疾患の発症率/死亡率は、喫煙者は非喫煙者に比べて男女ともに2~3倍高くなります。タバコに含まれる有毒物質や発がん物質は、健康を奪うだけでなく周囲の人の健康も奪います。自分だけならまだしも家族にも悪影響を及ぼすことになるので本当に良いことはありませんね。禁煙をお勧めします。
タバコの煙には「主流煙」と「副流煙」とあります。
喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書 (平成28年8月)では、喫煙と虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢性の動脈硬化症との関連について「科学的根拠は,因果関係を推定するのに十分である(エビデンスレベル1)」です。
副流煙にも主流煙と同じく有害な成分が含まれていて、ニコチン、タール、一酸化炭素などの成分量は主流煙よりも多いと言われています。受動喫煙も同様に,虚血性心疾患・脳卒中との関連について「科学的根拠は,因果関係を推定するのに十分である(エビデンスレベル1)」とされています。
近年、無煙タバコや電子タバコが流通しています。虚血性心疾患に関する長期的な効果については、今後の研究が待たれるところですが・・・やめておいたほうが無難でしょう.。
自力でやめることが難しい人は,医療機関の禁煙外来を受診するのも良いでしょう.
食事の管理をしましょう
食事の管理は禁煙と同様か、それ以上に大変なことだと思っています。
毎日、3食の食事を管理するのも大変です。また、食事は人の欲(食欲)であり、人生の楽しみの一つでもあります。そんな楽しみを奪われることの辛さは、なかなかに厳しいと思います。
しかし、毎日の食事が身体に及ぼす影響は非常に大きいのです。
心疾患がある方には、減塩食が推奨されています。病院で出る食事も6g/日の食事です。動脈硬化を進行させないためにも塩分の摂り過ぎには注意が必要です。
毎日のことなので大変ですよね?宅配サービスの利用をときどき利用してみるのも一つの方法です。入院中に減塩食を食べても自宅に帰ると元の食生活に戻ってしまう方がほとんどです。それだけ減塩食を続けることは大変です。減塩食の味をときどき味わって「薄味にしなきゃなぁ」と考える機会も必要ですね。
こちらの配食サービスも利用してみてください。
減塩
塩分の過剰摂取は,高血圧の原因になります。
塩分の摂取量は、男性9.0g/日未満.女性7.5g/日未満が推奨されていますが、高血圧予防のためには6.0g/日未満が望ましいとされています。
塩分6.0g/日未満はなかなか大変です。普通の食事をしていては6.0g/日を超えてしまいます。
味噌汁一杯で塩分約1.2gです。塩分6.0g/日未満ですので、2杯3杯と飲んでいたらあっという間に塩分摂取量は増えてしまします。毎日、自分で作るのは至難の技です。
しかし、食事を改善しないと再発のリスクがあります。毎日の食事が身体を作っていきます。
メディミールという配食サービスでは、塩分制限食があります。自分で塩分制限食を作り続けるのは難しい方も多いと思います。管理栄養士,看護師,理学療法士の医療の専門チームが監修している宅配制限食を利用してみるのはいかがでしょうか?
アルコール摂取
「アルコールを飲んではいけない」というわけではありません.ただし,摂取量には注意が必要です.
純アルコール摂取量の目標は30mL/日未満としましょう.アルコールの摂取量が増加するに伴って,高血圧になります.30mLを超えると脳卒中の発症率が増加するともいわれています.
飲みすぎには注意しましょう。
脂質管理
虚血性心疾患の原因となる動脈硬化は、血管の内壁に LDL コレステロールが蓄積して粥腫〔アテローム〕の隆起〔プラーク〕が形成される状態です。血管の中に溜まるコレステロールは血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)です。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)は、LDLコレステロールを取り出してプラークの形成を抑制してくれます。
日本動脈硬化学会:脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版
体重の管理
BMI( 肥満指数)は、身長と体重で算出されます.。BMI が18.5~24.9kg/m2になるように体重を管理しましょう。
食事を抜いて体重を減らすだけではいい痩せ方とはいえません。理想的なのは筋肉量を増やして、脂肪を減らすことです。
そのためには運動と食事の管理が必須になります。健康的に痩せられるようにしましょう。
糖尿病の管理
虚血性心疾患患者の合併症を見ていると、糖尿病の合併は多い印象があります。
糖尿病がある方は、HbA1c値を7.0%未満にするような食事の管理をしましょう。 糖尿病の管理のためにも、食事の管理、薬剤の管理、継続的な運動が重要です。
やはり、ここでも食事の管理は重要になってきます。
毎日の食事の管理には注意しましょう。
運動の管理
虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の冠危険因子がある方はその因子をできるだけ減らせるように適切な治療や生活習慣の改善を行いましょう。
肥満やメタボリックシンドローム、糖尿病の管理をするためにも運動を行いましょう。
運動療法の効果は
- 心肺機能が改善する
- 血栓ができにくくする
- 冠動脈が再び狭窄したり,バイパス術をした場合には閉塞するのを防ぐ
- 動脈硬化の進行を防ぐ.原因となる冠危険因子を是正する
- ーLDL(悪玉)コレステロールを減らす
- -中性脂肪を減らす
- -HDL(善玉)コレステロールを増やす
- -体脂肪を減らす
- -血圧を改善する
- -糖尿病を改善する
- 筋力が強化される
- 体力が強化される
- 自律神経が安定する
- ストレス解消
様々な効果があります。再発予防に運動は重要です!
ただし過度な運動は危険な場合もあります。どの程度の負荷のかかる運動をすればいいのかは、病院で確認してみましょう。運動負荷試験で”運動処方”を確認して、運動の種類や強度、頻度を確認してみましょう。
心理的要因
虚血性心疾患の危険因子には、性格も関係していると言われています。
「タイプ A」
常に頑張ろう、負け嫌いなどと自分自身にプレッシャーをかけ、向上心が強いタイプ
「 タイプD」
落ち込み、心配、イライラ、怒りなどネガティブな感情にとらわれやすい方。他人からの目を気にして、反感を持たれないように自分自身の感情を抑え込むタイプ。
当てはまるタイプがあれば、注意してみましょう。
まとめ
アクティブにシニアライフを過ごすためには、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)にならないように注意しなければなりません。アクティブに過ごすためには健康を維持することが必要です。
狭心症や心筋梗塞は、命に係わる疾患です。冠動脈を危険にさらす危険因子を一つでも改善できるようにしましょう。
普段からの食事の管理は重要です。食事や運動が身体を作ります。塩分摂取量が多い方は配食サービスなどを利用してみましょう。