歩いていると,だんだん足が痛くなってくるんだよね。
だから、休み休みじゃないと歩けないんだよ。
遠くまで行かなきゃいけないときは困るね~
という方はいないでしょうか?もしかしたら閉塞性動脈硬化症かもしれません.
そもそも、歩く距離が長くなって足が痛くなる人というのは、いくつか原因が考えられます。 『閉塞性動脈硬化症』や『脊柱管狭窄症』です。
閉塞性動脈硬化症とは,”脚の血管が細くなってしまうために、血流が悪くなっている”ことが考えられます。
脊柱管狭窄症は、ヘルニアや加齢によって骨や靭帯が分厚くなることで神経の通り道が狭くなり、足の痛みや痺れ、腰痛が生じてしまう病気です。
今回は,閉塞性動脈硬化症の話をしていきたいと思います。運動療法はどのようにしたらいいのでしょうか?まずは、自分の身体がどうなっているのか病院で診てもらいましょう。
そもそも閉塞性動脈硬化症とはどんな病気か?
閉塞性動脈硬化症は、『足の血管の通り道が狭くなって,詰まったりすることにより、身体の組織や臓器全体に血液が行き渡らなくなって虚血症状を起こす病気』のことです。下の絵のように血管が狭くなってしまします。血管が狭くなるとその先には血液が流れにくい状態となります。
その原因は,
以上のことが原因と考えられています。加齢によるものは仕方がないですが、生活習慣によるもの、動脈硬化は普段の生活が影響しますね。それでは、どのような症状が起きるのでしょうか?
以上のような症状が出現します。恐ろしいですね…
その症状の1つに長く歩くと足が痛くなってしまう、『間歇性跛行』というものがあります。これは,『しばらく歩くと足のだるさや痛みなどが生じて歩けなくなって、少し休むと再び歩けるようになる』という症状です。血管が細くなってしまったことによって、運動による筋肉内の酸素需要の増加に対して、供給が追いつかなくなってしまうために起きます。これは閉塞性動脈硬化症の方の70~80%の人が訴えます。
閉塞性動脈硬化症の分類は?
閉塞性動脈硬化症はFontaineの分類によって分類が分けられます。
1度
1度は,動脈硬化が原因で足の血行が悪く、足に冷感や痺れがみられます。血行障害はそれほどひどくないので多くの場合、症状もすぐに消失して通常は無症状です。皮膚の変化は,皮下脂肪の萎縮や脱毛などがみられます。
2度
2度は、しばらく歩くと足のだるさや痛みなどが生じる『間歇性跛行』という症状が見られます。少し休むと,また歩けるようになるという段階です。閉塞性動脈硬化症の特徴的な症状になります。歩行運動によって筋肉内の酸素需要が増えたことに対して、血液の供給が追いつかなくなるために生じてしまうために起きます。200m以下の歩行で痛みがあるときには、足の虚血が重症である可能性があります。間歇性跛行の診断においては、腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの神経疾患によって生じる神経性間歇性跛行の鑑別が重要です。
この段階までは運動療法で”歩行”ということを中心にやることによって新しい血管が作られます。
3度
3度は、”安静時から疼痛がある”段階になります。安静にしてるだけでも足の筋肉に血液が足らないため,酸素供給が不足して痛みが生じてしまいます。足を下げると血液が足に行きやすくなるためベッドから足を下げて寝るような姿勢をとる人もいます。この状態になると、足の潰瘍や壊死なども起きる可能性があるため,適切な治療行う必要があります。
4度
4度は、”壊死”や”潰瘍”が起きやすい段階です。例えば、靴擦れや小さな傷、圧迫が受けやすいところ、ちょっとした傷から潰瘍や壊死が生じてしまいます。血液の流れが悪いために治りが悪く、悪い部分がどんどん広がってしまいます。適切な治療が行われない場合には、1年後の死亡率が25%にも達してしまい、足の切断も見られるという報告があります。
閉塞性動脈硬化症の運動療法とは?
閉塞性動脈硬化症の運動療法は、Fontaineの分類でクラス1~2が対象です。
『歩行』するということが治療になります。歩くと、血管の中では運動に必要な酸素を必要とします。ところが流れる血液が少ないために酸素不足を起こして足が痛くなります。身体は血液を必要とするため、新しい血管を作ろうとします。それを側副血行路(自然のバイパス)といいます。この血管をつくるために痛みが出るくらい歩きます。
出来れば30分/日以上歩いて足の血管に「血液が必要なんだ!」と刺激を入れてあげる必要があります。
ウォーキングポールを持つと足の痛みが軽減して歩行できる
歩行をして、側副血行路を作りたいわけですが、痛くて歩けないと思う方もいるかもしれません。そこで今回紹介する研究はこちらです。
閉塞性動脈硬化症の方が、ウォーキングポールを持って歩くと、
”足の痛みが軽減し、歩く距離が伸びる”
「ウォーキングポールを持って歩く場合」と「持たないで歩く場合」では,どちらの方が長い距離歩けるでしょうか?それは,「ウォーキングポールを持って歩いた場合」です.
この研究は,閉塞性動脈硬化症の方がノルディックウォーキングを行って,歩行能力が改善されたというような研究です.
週2~3回×3カ月間のリハビリテーションプログラムを行ったという方を対象にしています。
トレッドミルトレーニング群:31人、ポールウォーキング群:21人で歩くトレーニングをしてもらいました。その歩行の能力の効果判定は『6分間歩行試験』です.
※6分間歩行試験:6分間なるべく速い速度で歩き続けて何m歩けるのかというような試験です。
閉塞性動脈硬化症などの運動療法は、『足の痛みが出てくるくらいの速度で30分以上歩く』というようなトレーニングです。
という結果でした。
つまり,ウォーキングポールを持って歩くことで,足の体重負荷が軽くなり,足の痛みが改善しています.足への負担を軽くして,長い距離を歩くことで最終的に歩行距離も痛みも改善してるということになります.
閉塞性動脈硬化症が進行する前に予防/改善しよう
閉塞性動脈硬化症は,進行すると恐ろしい病気です.
早期の段階から運動療法をしたり,生活習慣を見直して、病気の進行を防ぐ必要があります。
(1度や)2度の人は、運動療法が対象ですので歩行訓練を積極的にやる必要があります。
基本的には、”長時間歩く”ということが中心です。しかも、”痛みが出るまで歩く”ということになります。そして、”痛みが出たら休憩をする”これを繰り返します。
ところがすぐに痛みが出てしまう人には、歩行の時間が短くなってしまうという問題が生じます。ウォーキングポールを使って歩くことによって足の負担を減らしながら長時間歩くことができます.そして,足の痛みを軽減して、歩行能力を改善するということになります。
使用するウォーキングポールは?
ポールウォーキングは、”歩く”という動作でありながら、足の負担を減らして長時間の運動が可能になるというメリットがあります。
ウォーキングポールの価格は、3000円台から20,000~30,000円するのもありますが、スポーツジムに行かなくてもできるということを考えれば費用対効果が良いトレーニングです。
ノルディックウォーキングとポールウォーキングは異なります.閉塞性動脈硬化症の方や中高齢者の方はポールウォーキングを選びましょう.
トレッドミルウォーキング(ルームランナー)で歩行練習
ルームランナーのことをトレッドミルといいます。トレッドミルを使えば、外に行くことなく、天気が悪くても歩行練習をすることができます。両手で支えることができるタイプでは、歩行練習で痛みが出たときに足にかかる体重を手に分散させることができます。足にかかる体重が軽減すれば、足の痛みが軽減できる可能性があります。
しかし、トレッドミルを自宅に置くことができない場合には、心臓リハビリテーションを行っている病院(できるかどうかは施設による)やスポーツジムなどに行って、トレッドミルが使える環境に行かなければなりません。トレッドミルは、歩いた距離や速度がわかりやすいといったメリットもありますが、週に3回以上のトレッドミルウォーキングができるかというと難しい部分があります。
家庭用のトレッドミルが設置できる場合には,是非購入してみてください.
自宅内で運動ができるのであれば,雨の日も雪の日もウォーキングをすることができます.
毎回,トレーニングジムに行く方は,購入してしまった方が費用対効果は高いかもしれません.
多くの場合ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)が,痛くて歩けなくなることが多いので,自転車エルゴメーターよりも,トレッドミルウォーキングをお勧めします.
家庭の中でトレッドミルウォーキングをする場合には,屋外と違って風を感じることができないため,体に熱がこもる熱中症になることに気をつけましょう.エアコンなどで温度調整ができる場所での使用をお勧めします.
本格的なホームジムを作りたい方は,フィットネスショップに相談してみると良いかもしれません.
ゴールドジムの公式通販サイト
ホームジムを検討されている方はこちらまとめ
閉塞性動脈硬化症で間歇性跛行がある方は、「歩行練習をしましょう」
痛みを軽減して、歩行距離を伸ばすためにはウォーキングポールを使って歩くことをお勧めします。なるべく長時間歩くことよって側副血行路が発達し、症状が改善してくるかもしれません。
家庭にルームランナー、ランニングマシン、トレッドミルが設置できる場合には、そちらの導入も検討してみましょう。
運動療法と同時に、動脈硬化を進行させないような食事も重要です。
アクティブなシニアライフが過ごせるように健康維持をしていきましょう。