研究計画書をつくるために必要なこと【リハビリ/理学療法士/作業療法士/看護師】

研究

リガクレは、臨床/研究/教育がテーマなので、私が大学院で学んだことをお伝えできればと思います。

研究計画書って作らなきゃいけないの?

と考えている方はいませんか?

研究をするためには倫理審査委員会研究計画書を提出して、許可を得なければなりません。
また、研究はデータ収集を計画に則って実行するということがポイントです。
そのためには、研究計画書を作成しなければなりません。

今回は、研究計画書を作るために必要なことということで解説をしていきます。

研究の流れ

研究の流れを下の図に記載します。

ステップが多くて大変そうですが、慣れないうちは段階的に進めていきましょう。

研究の仮タイトル

最初に作る研究のタイトルは(仮)です。
おおまかな内容がわかるように(仮)タイトルを付けてましょう。

このタイトルから「対象者」「何についての研究なのか」がわかるようにしましょう。

あまり長すぎるタイトルでは読む気がなくなってしまいます。
タイトルの長さは、だいたい20文字程度を目安にしましょう。
必要であればサブタイトルもつけましょう。
必要ない場合にはサブタイトルは必要ありません。

研究計画書を作成する段階では、タイトルは長くてもかまいません。
内容がわかるタイトルを付けましょう。

研究を終えた後にタイトルは再検討をします。
その際には、その研究を見る人が興味を持ってくれそうな魅力的なタイトルをつけましょう。

この研究、見てみようかなぁ

と考えるときにはタイトルを見て決めますよね?
タイトルによって、「読むか」「読まないか」が決まるので周囲の人に相談しながら読者が興味をもってくっれそうなタイトルを付けましょう。

研究の背景

「研究の背景」は、論文学会発表の前には最後に検討しますが、研究計画をする段階では大まかに背景がわかるように記載しておきましょう。

研究の背景のポイント
  • 今回の研究を着手しようとした理由は何か?
  • 過去の研究は何が明らかにはなっていないので、この研究をするのか?
  • 今までの研究の不十分だった点は何だったのか?

先にも述べましたが、研究の背景は最後で構いません。
しかし、予め共同研究者と簡単にディスカッションができていると良いでしょう。

研究計画を作成している段階で

そもそも、なんでこの研究するんだっけ?

と一度立ち止まってみて、研究が暴走しないようにしましょう
研究を始めるのに勢いは大事なんですけどね。

研究の目的

研究のタイトルと同じくらい大事なのは、研究目的です。

読者は、タイトルを見て内容を想像しますが、その次に「研究目的」をみて、何を明らかにしようとしている研究なのかを確認します。

研究目的も最終的には調整をすることになると思います。
出来れば、研究の目的に沿った内容の研究ができることが理想的ですが、研究初心者の方は研究を進めているうちに「研究目的と内容が変わってきちゃった」ということがあります。

慣れが必要なので、学会発表や論文を作成するときに目的と内容が合っているかを確認しましょう。

研究目的のポイント
  • 何を明らかにするための研究なのか?
  • 何を知りたいのか?
  • 今回の研究の新規性は何か?
  • 何がこの研究の独創的な部分なのか?

研究の対象者を決める

研究の目的によって、研究対象者は変わってきます。

研究対象者で考慮すべきこと
  • 自分の用意できる環境で研究対象者が集まるのか?
  • 研究目的に合った対象者か?
  • 健常者か?有疾患患者か?
  • 年齢は?
  • 比較研究の場合、比較する群の属性(年齢、体格、性別)は合っているか?
  • 統計処理に必要な被験者数を集められるか?
  • 実行可能性は高いか?
  • 取り込み基準(どの施設?どの診断名?)は?
  • 除外基準(研究の対象者から除外する人)は?

注意点は、統計処理に必要な対象者数(サンプルサイズ)と実行可能性が解離することがあります。
現実的に集められる人数と理想的な対象者数が異なれば、実現することはできないかもしれません。
この点についても、研究開始前に共同研究者と相談しておきましょう。

研究の倫理審査では、予めサンプルサイズをどのように設定したかを明記しなければならないことがあります。

その際には、【G-Power】を使いましょう。

研究の方法を決める

研究の目的によって方法が変わります。
研究デザインの概要を決めましょう。

研究目的による分類
  • 記述的研究
  • 分析的研究
  • 介入研究
介入の有無
  • 観察研究:横断研究、縦断研究(後ろ向き研究、前向き研究)
  • 介入研究

何をやりたいかを考えれば、どんな研究に当てはまるのかは自ずと決まります。

デザインをしっかり決めておくことが重要です。
見切り発車で出発してしまった研究は、データがとり終わってからデータの解析ができなくなります。

データ取ったから、このデータ料理して

このデータじゃ何もできませんよ~

ということにならないように注意しましょう。

そして,倫理審査委員会に審査をしてもらうには研究計画書を提出しなければなりません。
昔は大雑把な研究計画書でも許可されていた印象ですが、今ではかなり研究計画について詳細に記載することになっています。

  • 研究対象者を何人にするのか?
  • どんな対象者属性にするのか?
  • 比較研究をするときには、A群とB群の対象者属性は同じにするのか?別にするのか?
  • 実験道具はあるのか?
  • 金銭的にはいくらくらいかかる研究なのか?
  • 統計学的検討は何を使うのか?
  • ・・・・・などなど・・・・・・

研究を開始する前にあらかじめ計画を立てておく必要があります。
あとで取り返しがつかない!
ということにならないようにしましょう。

参考文献、先行研究を読む

研究計画を立てるためには、参考文献、先行研究を読まなければなりません。

自分がやろうとしている研究の分野では既に何が行われているのか?
何が明らかになって何が明らかになっていないのか?

自分が研究を進めても、

「それはもう誰かが明らかにしてるよ」

ということになれば

「え?そうなの?」

ということになってしまいます。
様々な文献を読んで新しいことをするポイント(新規性)を押さえておきましょう。

よく『1日1論文読もう!』と言われることがあります。
正直しんどいです。
けれど、やる人とやらない人では将来大きな差がつくことになるでしょう。

先行研究をコツコツと読もう!

実験をするのにどのぐらいの期間が必要なのか考えておく

研究計画の構想しているときに、理想となる研究が出てくるかもしれません。

しかし、それが実行可能かどうかも冷静に判断する必要があります。

研究データを取るのに、1年間かかっていては、修士課程の2年間、もしくは博士課程の期間に研究を終えることができないかもしれません。

データをとった後には、データを集計して、統計解析をして、発表するための準備をします。

研究データを揃えるのにどのぐらいの期間が必要なのかをあらかじめ考えておかなければ、研究をやり直すこともできないし、解析や研究をまとめる期間もありません。

特に発表スライドを作ったことがない人は、スライドの作り方でてこずるでしょう。

それ以上に論文を書くとなると、かなり時間がかかります。

「こんなに日本語って書けないものかな?」

と思えるほどに、全然文章は書けません

読み返してみると、脈絡がなかったり、作文になっていたり、誤字脱字があったり、目的と結果が違っていたり、様々なことがわかります。

精一杯頑張って作ったとしても、その後の査読で大量に修正が入り、心が折れるかもしれません。

1つの研究をやるだけでもかなりの時間がかかるので、実験データを揃えるのにどのくらいの期間がかかるのかをあらかじめ予想しておかなければなりません。

どのぐらいお金がかかるのかを考えておく

研究って…お金がかかるんですよ。

え?そうなの⁉


と思う方も多いと思います。

研究機器にお金がかかる

何か道具を使って研究しようと思った場合に、その道具を買わなければなりません

職場に測定する機械があればその機械を使えばいいでしょう。
実験が可能かどうかは、その機械があるかどうかを確かめる必要があります。

もし自分がやりたい研究に道具が必要であるのであれば、その機械を揃えるためのお金を用意しなければなりません。

大学院の学費・交通費がかかる

大学院まで通学する距離が近ければ、それほど交通費はかからないかもしれませんが、私の場合はかなり遠方だったため、ガソリン代だったり、高速道路代だったり、電車代がかかります。

最近はオンライン授業をしている大学院も多いので学校まで足を運ばなくても学べるところが多いと思います。
発表スライドを共有してディスカッションをすれば交通費が浮きますよね?
交通にかける費用と時間は馬鹿にならないので、働きながら大学院に行っている人にとってオンラインで授業が受けられるのは素晴らしいです。

学会参加費がかかる

学会発表するためには、学会参加費が必要になります
何の学会に参加するかによって参加費は異なってきますが、学会参加費が必要になるでしょう。

今ではオンラインで学会をしているところも多いので、交通費がかからない場合もありますが、学会会場に出向く場合には交通費が必要になります。

宿泊する必要があるのであれば宿泊費が必要になります。

論文にするためには、投稿費用が必要になる場合があります。
それは、何の雑誌に投稿するかにもよります。
学会が運営する雑誌の場合には学会に入会する場合があるでしょう。
そうなれば、学会の入会費がかかります。

海外の論文に出すためには、英語の文章に変えてくれるためにお金がかかります。

学会誌の予定は、10万単位でお金がかかる雑誌もあります。

正直なところ、お金が払えるのであればアクセプトされやすい学会誌もありますし、無料だけれどもアクセプトされるにはかなり厳しい雑誌もあります。

なんで研究するのに、自腹切って出費しなきゃいけないの?

と思うので、公的な研究費が集められる人は集めたほうがいいです。

ところが大学院生はそういった研究費を集めることができない場合が多いです。
研究費用出してくれるところも、ちゃんとした研究ができる能力のない人には研究費を払いたくないんですもんね?

信頼を得るためにも研究ができる能力を養っておかなければなければなりません。
最初は身を切る思いで出費をするのは仕方ないことかもしれませんね。

統計手法を考えておく

統計手法を考える前に研究をスタートさせてしまう場合が多いと思います。

データが揃ってから、「どの統計手法が使えるのか?」と考える場があります。

研究をしたことがない人には、その統計手法を考えるだけだってかなり時間がかかるからいつになっても研究ができないと考えてしまいます。

ところが時々、

「このデータじゃぁ統計解析できないよ」

「えーーーー!」

という場合があります。
もう・・・死にそうなほどショックです。

データを取り直しするわけにもいかないし、統計解析もできないし、もうどうにもなりません

そうならないためにも、あらかじめ統計手法を考えておく必要があります。

大学院生は統計学の授業を頼りにしていては、おそらく間に合わないでしょう。自分で統計学の参考書を手に取り、インターネットで統計学について勉強し、何の統計学的手法が使えるのかを考えておかなければなりません。

研究するって大変ですね。

倫理審査

研究をするためには倫理審査委員会倫理審査をしてもらわければなりません。

自分がやろうとしている研究が倫理的に大丈夫なのかどうか、第三者に判断してもらう必要があります。

もし血液採取をしなければいけない研究デザインの場合に、対象となる方に侵襲のある研究となります。

研究が患者さんの不利益になってしまってはダメです。

自分の理想とする研究デザインが、倫理的に大丈夫なのかどうかを審査してもらわなければ研究をすることができません。

大学院生の場合には、所属する大学院の倫理審査を通らなければいけません。

さらに病院で研究データを取るときには、所属する病院の倫理審査を受けなければいけません。

倫理審査は、常に行っているわけではなく、倫理審査は月に1回しかやらないというところも多いと思います。

例えば、倫理審査委員会への書類の提出がその月の1日〆切だった場合には、それまでに研究計画書や倫理審査の申請書指導教員の許可と、職場の上司の許可を得なければなりません。

研究計画書を作るだけでもかなりの期間がかかり、職場の上司の許可を取るにも時間がかかるとなれば、倫理審査委員会に提出するまでに1ヵ月ぐらいかかる場合もあります。

倫理審査委員会に書類を提出してもその後に、審査を受けるのは2週間後、そのまま倫理審査を通過すれば良いのですが、「再度倫理審査を受けてください」ということになればさらにその1ヵ月先になります。

倫理審査までの期間や審査の細かさは職場や大学院の倫理審査委員会によりますので、何とも言えませんが。

いつになったら研究できるの?
倫理審査を通すまでに、もう研究のやる気がなくなっちゃった・・・


なんてことはよくあります。

倫理審査にどのぐらいの期間がかかるのかをあらかじめ計算した上で、研究計画書を作成し、実験データを取るのにどのぐらいの期間がかかるのかを想定し、研究をまとめるのにどのぐらいの時間がかかるのかを考えておかなければなりません。

博士過程では,いくつかの研究を行いそれを組み立て最終的な博士論文にします.

そのため倫理審査も一回では済まないことが多く,何度かやり取りをしなければならないかもしれません.

そのぶんの期間がかかるということになります.
これはかなり計画的にやらなければなりません.

まとめ

研究を始めるまでにはかなり準備が必要です。

研究計画を作成し、本実験にかかるまでで研究の6割ぐらいが決まってしまうかもしれません。
いや、もっと決まるかもしれません。

いろんな学会でいろんな論文があるということは、世界中では、こういったことが当たり前に行われています。

辛いのはあなただけじゃない。
辛いことを辛いとは思わない。

大学院で研究をするということは、こういう経験を経て人格を形成していくということになるのだと思います。そうであってほしいです。
批判的なことばかり言う研究者にならないように、建設的な意見が言える研究者になりましょう。

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