アクティブシニアは『ひざトレーナー』で電気刺激を利用し、効率よく筋肉を鍛えよう

トレーニング

歩けなきゃしょうがないから、筋力を強化しよう!

と思ったときには何をするでしょうか?

一般的には、筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)をやりますよね?

近年では、筋力強化廃用症候群の予防に電気刺激療法(EMS)が使われるようになりました。

B-SESSOLIUSという機械は、医療現場で寝たきりの状態から使用することができます。ところが、大きな病院じゃないとそのような道具はありません。一般の人や介護サービスの現場でも使えるEMSの機械でなにかいいのはないのかなぁと思っている方もいるのではないでしょうか?

今回、紹介するのは、ひざトレーナー という機械です。

ひざトレーナーとは

「ひざトレーナー」は、Panasonic出しているフィットネス機器です。

この機械の特徴は、寝たきりの患者さんだけでなく、歩きながら大腿四頭筋に対して電気を刺激して、筋力を鍛えるという方法です。この機会の中に体の動きを感知するセンサー(ボディモーションセンサー)が入っているので、身体の動きに合わせて電気刺激が入ります。

昔の電気刺激療法(EMS)というと、座っている状態でも腹筋が鍛えられる!というような機械でした。ところが、

運動に合わせて電気刺激を加えることを「ハイブリッドトレーニング」といいます。 ハイブリッドトレーニングは久留米大学の医学部によって2000年から研究されてきたそうです。

やはり歩くことが大事!

サルコペニアをご存知でしょうか?

加齢に伴って骨格筋量が減少し,身体機能や筋力が低下してしまう状態です。

いきいきとシニアライフを過ごすためには、体が動かなければなりませんね!筋力・体力を維持して、「サルコペニアだね~」といわれないようにしましょう。

なにをもって「サルコペニア」だというのでしょうか?

サルコペニアの診断基準は、「筋肉量、握力、(通常の)歩行速度」です。下の図のような指標でサルコペニアを診断します。普通に歩いている速さなので、アクティブシニアの方はクリアできると思いますが、歳とともに歩けなくなってきます。

やはり”歩く”ということは重要ですね!しっかりと歩けるように筋肉を落とさないようにしましょう。

サルコペニア基準

(アジアワーキンググループのサルコペニア診断基準)

Chen LK,et al.Sarcopenia in Asia: consensus report of the Asian Working Group for Sarcopenia.J Am Med Dir Assoc. 2014 Feb;15(2):95-101

ひざトレーナーの使い方

ひざトレーナーのゲルパッドを大腿四頭筋ハムストリングスに貼付します。 脚に直接貼ります。服の上からでは、電気が流れませんのでご注意ください。

大腿には黒いサポーターを巻きます。 下の絵のようになりますが、その上から服を着れば装着しているかはわかりません。サポーターから本体にケーブルがつながっているのでズボンの上から出すようにすると服を着たまま電気刺激の設定ができます。

サポーターの中にボディモーションセンサーが入っています。 このセンサーが入っていることで、歩行の動作を検知し、歩行のタイミングに合わせて電気刺激が入ります。この電気刺激によって筋肉が収縮して力が入る、筋肉が強化できるという仕組みです。

ひざトレーナー

ひざトレーナーはどんなモードがあるのか?

ひざトレーナーにはいくつかのモードがあります。

  • 歩いて使う:「いきいき歩くモード」 「歩いて筋トレモード
  • 座って使う:「座って刺激モード
  • 立って使う:「スクワットモード」「もも上げモード

設定によって歩ける方から歩けない方まで幅広く使うことができます。また、座りながら筋肉を刺激することもできますし、歩きながら、筋トレをしながらなど状況に合わせて設定を変えることができます。

オー!これは便利ですね!歩くだけじゃないんだ!

歩いて使う:「いきいき歩く」モード

大腿四頭筋ハムストリングスを同時に刺激することで、歩行中の膝周りの筋肉を安定させながら歩くことができます 。歩きながら大腿(太ももの前後)の筋肉を鍛えることができます。大腿の筋肉は、歩くのに重要です!

大腿(ふともも)の前後の筋肉(大腿四頭筋、ハムストリングス)を収縮させるので、膝の安定性を向上させることができます。歩行に合わせて電気刺激がはいりますので、最初は驚きますが、慣れれば大丈夫です。歩行をする際に必要な筋肉に収縮を入れて、筋収縮をサポートしてくれます。

歩いて使う:「歩いて筋トレ」モード

ひざトレーナーを大腿に装着して足が地面に設置する(立脚期)と大腿四頭筋(太ももの前)に収縮が入り、足が離れるとき(遊脚期)にはハムストリングス(太ももの裏)に力が入ります。

ウォーキングに慣れている方に向いています。

座って使う:「座って刺激モード」

運動に連動させなくても、電気刺激を入れてくれるモードです。

このモードは座っている時でも、一定のリズムで大腿四頭筋とハムストリングスに電気刺激を入れます。そのため、テレビを見ながらでも筋肉に力を入れることができます。運動しながら電気刺激をする方が良いですが、電気刺激の導入として使用してもいいと思います。

今は、テレワークをしている方も多いと思うので、座ったまま動けない状態でも大腿四頭筋を刺激することができます。

立って使う:「スクワットモード」「もも上げモード」

「スクワット」「もも上げ」運動でも電気刺激を入れて筋収縮をサポートしてくれるコースです。

スクワット」をすると、ボディモーションセンサーが動きを感知して電気刺激が入ります。主に大腿四頭筋を使う運動様式ですので、筋収縮のサポートをしてくれます。さらに、回数のカウントもしてくれます。しっかりと膝を曲げないとカウントしてくれません。

もも上げ」は、その名の通り左右交互に足を上げます。上げている方の足に電気刺激が入ります。力がなくて足が上がらないという方はいいですね。電気刺激で大腿直筋のサポートをしてくれます。

「スクワット」と「もも上げ」は、「家で筋トレコース」では交互に行いますが、それぞれ単独でも設定することが可能です。

ひざトレーナーを使用してみた感想

率直に「面白かった」です。自分の足の動きに合わせて電気が刺激されますが、最初はその刺激に驚き「おおッ!!」っと声を出してしまいました!他の人で試したときも「うわぁぁぁぁぁぁぁ」とひと盛り上がりしました。

まずは、座ったまま電気刺激の強さの設定をします。徐々に強度をあげていくと、太ももにビリビリと刺激が入ります。大腿四頭筋とハムストリングスの前後、そして左右の大腿の刺激強度を1つずつ設定していきます。最初は電気刺激に驚きました。しかし、だんだんと慣れてきます。

仕事中にも使ってみたり、階段の上り下りでも使用してみましたが、ズボンの下で装着することができるためいつでも使えます。人にバレずに使うことが可能です。(電気刺激で歩き方が変になってしまう人は、バレてしまうと思いますが・・・)

ひざトレーナーを使った足が軽くなる気がする?

若い健常者10名で使ってみたところ、電気刺激後には「足が軽くなった」という人が、6/10名いました。使用後も「特に足の軽さは変わらない」という人は4/10名いました。

おそらくこの足の軽さは、電気刺激によって運動単位数が増加したのでは?と推測しています。

どういうこと?

筋肉の線維は、100本あったらいつも100本が収縮しているわけではありません。収縮しやすい筋線維と収縮しにくい筋線維があります。運動の負荷や神経の刺激の強さ、収縮の速度で活動する筋線維が変わります。

軽い負荷やゆっくりとした筋肉の収縮で活動するのは遅筋線維です。強い負荷や速い筋肉の収縮で活動するのは速筋線維です。そのため、速筋線維は収縮がしにくい線維です。

ところが、電気刺激による収縮では遅筋線維も速筋線維も同時に(非選択的に)収縮します。

ひざトレーナーにより電気刺激を行ったことで、強い刺激でないと収縮しない速筋線維も収縮をしたことや運動不足で活動しにくくなっていた筋線維が収縮しやすくなったと思われます。活動する筋線維の数が増えたために足が軽くなったと感じたのではないかと推測します。(実験したわけではありませんので推測です。)

エルゴメーターでも使えます

ひざトレーナーのボディモーションセンサーは、歩行を感知します

しかし自転車エルゴメーターでも、運動を感知して電気刺激を入れてくれました!エルゴメーターの有酸素運動と連動させて、ふとももに電気刺激を入れることもできそうです。

シニア世代の方は、自宅でエルゴメータをしている方もいるのではないでしょうか?介護施設でも使えそうですね!

えー足が疲れるから運動したくないわ。エルゴメータも疲れるから嫌だわぁ

という方は、EMSの力で筋肉をアシストしてもらいながらやってみるというのはどうでしょうか?(拒否の強い方は、電気の刺激も嫌がりそうですが・・・)とにかく、まずはチャレンジですね!

エルゴメータ

EMSの電気刺激は慣れるのか?

若年者に対して、自分で電気刺激の強度を調整してもらい、「座って刺激モード」で10分体験してもらいました。耐えられる最大の強度(修正Borg Scale10)で設定をし、2分ごとに痛みの感じ方について聴取しました。

なんと、約10分程度で痛みの感覚は、約半分まで有意に低下しました

つまり電気の刺激で最初は驚いても、使用しているうちに10分間で慣れます

「歩いて使うモード」では、最初に立ち上がった時に電気が流れるため、動けなくなる人がいると思います。そのような人も、約10分間体験しているうちに慣れてくると思います。

しかし、慣れてきたからといって電気刺激を強くし過ぎてはいけません。

電気刺激の留意点

特有の疲労(LFF:Low frequency fatigue)があります。また、強い電気刺激で痛みが残る人もいるようです。 最大の強度で最大の効果が得られるわけではないと考え、電気刺激の強度にしながら、徐々に電気刺激の強度を上げていた方が良さそうです。

また、浮腫むくみがある場合、電気は表面の水分を通り、筋線維まで到達しないため、電気の刺激強度を上げても筋肉が収縮しません。だからといって、電気刺激の強度を強くすれば、筋肉にはダメージが生じる可能性があります。

近年の研究では、電気刺激が筋肉の維持や強化、廃用症候群の予防に有用であるという研究が多数ありますが、リスク管理に関する研究も十分に行わなければならないと思います。

まとめ

ひざトレーナーは、動ける人も動けない人も使える電気刺激療法(EMS)です。歩行と同時に電気刺激(EMS)ができるハイブリッドトレーニングなので珍しい機械です。EMSは、電気が筋収縮を促してくれますが、実用的な筋肉にするためには、自分の脳からの信号に合わせて筋肉を動かさなければなりません。そのような点で有効な電気刺激療法だと思います。

個人向けに販売されていますが、個人で買いうのはなかなかに高額だと思います。デイサービスや介護施設、他の人と共同で使用できる施設じゃないと購入は難しいですかね?購入できるシニアの方は試してみてください。

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